「怒り」は、悪者ではない。あなたに大切なことを教えてくれる感情です。
私たちの日常では、イライラすることはあっても、怒ることは抑えているかもしれません。それは、小さい時から“学校で喧嘩してはいけない”とか、“みんなと仲良く”などと教えられてきたから。自分を主張しすぎることは悪いこと、我を張るのは人間性ができていない人などと思われることを避けるからだと思います。
こんにちは、日本セルフエスティーム実践協会(JSELジェイセル)の小西です。
自分の意見と違っても周囲に合わせる。「和」を乱さないことを優先することを学んだからでしょう。でも、日常の怒りを溜めることは、決して良い状態ではありません。怒ることは、人間にとって大事なプロセスです。
怒りは「消すべき悪」ではなく、「読み解くべきメッセージ」と捉えるべきなのです。
心理学や脳科学の視点から紐解くと、私たちがなぜ怒りを感じるのか、その正体が見えてきます。今回は「怒り」についてお話しますね。
心理学では、怒りは決して「悪いもの」ではありません。それは「自分にとって大切なものが傷つけられた」というサインなのです。でも、その大切なものを私たちは明確に分からないのです。
1.怒りは「第二次感情」と呼ばれます。怒りが湧く直前には、必ず「第一次感情」が隠れています。
第一次感情 本音の感情: 不安、恐怖、悲しみ、寂しさ、辛い、苦しい、虚しい、罪悪感、驚き、恥ずかしい、嫌だ、疲れた、孤独感。これらは「心のコップ」に溜まり、溢れると、怒り「二次感情」として表現されます。
第二次感情 表面に現れるのは、攻撃、拒絶、大声、沈黙。これらは自分を守るための「武装」です。
2.脳で何が起きているのか?
怒りを感じたとき、あなたの脳内では以下のような反応が起きています。
大脳辺縁系(扁桃体): 危険を察知し、「攻撃か、逃走か」の指令を出します。
前頭前野: 本来は感情をコントロールする場所。しかし、怒りが強すぎるとこの「理性のブレーキ」が利きにくくなります。
アドレナリン: 心拍数を上げ、体を戦闘モードに切り替えます。

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なぜ、脳はわざわざ感情をすり替える必要があるのでしょうか?
生物学的な視点で見ると、「怒り」は自分を守るための生存本能から発動されるからです。
怒りは、社会からの学びに「影響」を受ける。
私たちの感情の出し方は、子供の頃に周囲の大人からどう反応されたか、あるいはその社会で「何が良いとされているか」という「感情の表示規則(Display Rules)」によってコントロールされます。
私たちがどの感情を第二次感情として使うかは、それぞれの育った環境や文化に大きく影響されます。
1.ジェンダーバイアスによる影響
「男の子は泣かない」と言われた環境
第一次感情(本音):悲しい、心細い、負けて悔しい
第二次感情:怒りや攻撃として表現されます。その裏にあるのは、弱さを見せるのは恥だが、強さ(怒り)を見せることは「男らしい」と許容されるため、反射的に怒りを選びます。
「女の子は愛想よく」と言われた環境
第一次感情(本音):納得がいかない、怒っている
第二次感情:「笑ってごまかす」「急な涙」「沈黙」で表現されることもあります。その裏には、直接怒りをぶつけると「ヒステリー」と言われたり、「はしたない」「可愛くない」と思われることから、怒りを抑圧して、沈黙したり、無意識に涙や作り笑いへ返還します。
2.日本の文化による影響
集団の調和を優先する環境では、ストレートな表現が避けられる傾向にあります。
「波風を立ててはいけない」という環境
第一次感情(本音):嫌だ、断りたい(困惑)、拒絶
第二次感情:「怒り」、「不機嫌」、「沈黙」することで表現されます。
・「察する」文化の影響:相手に直接「困る(第一次感情)」と伝える代わりに、「不機嫌な態度(黙り込む、溜息をつく)」(第二次感情)をとることで、相手に自分の意図を察してもらおうとします。
・「世間体」を重んじる環境: 恥ずかしい、みっともない(第一次感情)という思いが強いと、それを隠すために、相手を「常識がない!」と正論で攻撃する怒り(第二次感情)に変換されやすくなります。
3.親の反応パターンによる影響
幼少期に親との間で交わされた「心のやり取り」は、脳の深い部分に「感情のスクリプト(感情表現の台本)」として書き込まれます。幼少期の親とのやり取りが、大人になってからの「感情の癖」になるわけです。
・「条件付きの愛」で育った場合:
幼少期の体験:失敗して落ち込むと、親から見捨てられるような恐怖を感じた。「親が良い成績を取ったとき」「親の言うことをきいたとき」だけ褒め、そうでない時に冷淡だったケース。
大人の「癖」:完璧主義と、他人の無能さへの激しい怒り。:自分がミスをすると自分を激しく攻めるか、あるいはその恐怖を隠すために周囲に当たり散らす。
第一感情(本音):「価値がないと思われることへの不安、寂しさ、恐怖、孤独感」
第二次感情:「なんでこんなこともできないんだ!」という他者・自分への攻撃。
・「親の感情のケア」を担わされた場合
幼少期の体験:自分が甘えたい、助けてほしい時でも、親がさらに不安定になるのを避けるために、自分の感情を押し殺し、親を落ち着かせる役割を担っていたケース。
大人の「癖」:「過度な気遣い」と、突然の「シャットダウン」:他人の顔色を伺いすぎて疲れ果て、ある日突然、連絡を絶ったり冷酷な態度をとったりする。
第一感情(本音):「誰も助けてもらえず、疲弊しきっている」
第二感情:「無関心」、「冷淡さ」という壁を作って自分を守る。
・自分の感情を「大げさ」と否定された場合
幼少期の体験:素直な感情を出すと「恥をかく」、「拒絶される」と学んだ。転んで痛がったり、悲しくて泣いたりしたとき、「それくらいで泣くな」「大げさだ」と感情を軽視されたケース。
大人の「癖」:皮肉、冷笑、また知性化。:感情的な衝突が起きそうなとき、理屈で相手を論破しようとしたり、「バカバカしい」と鼻で笑ったりする。
第一感情(本音):「自分の心に触られるのが怖い、恥ずかしい、悲しい」
第二感情:「冷笑的な怒り」、「過度な論理武装」
・つねに「比較」されて育った場合
幼少期の体験:自分の存在そのものではなく、他人との相対的な位置でしか安心感を得られなかった。「お兄ちゃんはできるのに」「隣の家の子は…」とつねに誰かと比べられているケースです。
大人の「癖」:強烈な嫉妬と負けを認めることへの恐怖:他人の成功を素直に喜べず、相手の欠点を探して引きずりおろそうとする怒りが湧く。
第一感情(本音):「自分はそのままでは選ばれないという惨めさ」
第二感情:「嫉妬に基づいた批判や攻撃」
これらの親の反応パターンによる影響は、子供の頃のあなたにとっては、その環境で生き延びるために必要だった「生存戦略」だったのです。でも、大人になった今でも、あなたがこれらの「癖」をネガティブに思うのなら、「あ、これは子供の頃に身につけた心の鎧だな」と気づくだけでも、そのネガティブな影響力を弱めることができます。
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あなたの「感情の表示規則(Display Rules)」は、どんなものがありましたか?
ジェンダーによるもの、日本の文化によるもの、親の影響によるもの、などありました。
・笑ってごまかすこと?
・「なんでこんなこともできないんだ!」という他者・自分への攻撃してしまう?
・相手に自分の意図を察してもらおうとする?
・自分がミスをすると自分を激しく攻めてしまう?などなど、
“感情を抑えていた自分”に気づけたのではないでしょうか。
怒りは「消すべき悪」ではなく、「読み解くべきメッセージ」と捉えるべきなのです。
あなたが怒りを感じたときは、「自分は今、本音にはどんな感情があるのだろう?」と心の叫びの感情を探ってみる癖をつけると、少しずつ自己理解が深まっていくと思います。
自分自身のことは、分からないことが多いものです。人生を生きていくとき、あなたの心の奥底にある大切にしたい気持ちを教えてくれる「怒り」は、あなたへのメッセージだと思ってください。
感情は豊かに育んでいきたいものですね。そして、ゆっくりと慌てずに生きましょう。

