いまを生き抜くための、あなたの心の守り方とは

最近耳にすることですが、「自分の思っていることを話さない人が増えている」ようです。だからといって、「日本人の性格が変わった」という単純な話ではありません。

社会の構造やコミュニケーションの手段が変化した結果として、「自分の内面を露出することのリスクやコストが高くなった」と捉えるほうがよさそうです。

じつは、SNSやデジタルツールなどを通じて、私たちは他者の感情や意見、批判的な空気によって、知らないうちに心が押しつぶされてしまうからなのです。

こんにちは、日本セルフエスティーム実践協会(JSELジェイセル)の小西です。

たとえば、テレビや大手ニュースメディアを通して、戦争/災害/事件といったシリアスな報道が、日常的に繰り返し流れてくると思いませんか。自分とは直接関係のない地球の裏側の惨事や、誰かの苦難を伝える映像がリアルタイムで飛び込んでくることで、私たちの脳は常に「他者の痛み」を代理で体験し続けます。この遠隔的な「他者の痛み」の蓄積が、知らず知らずのうちに心を圧迫します。

そして、チャットツールやグループウェアの普及によって生じた、他者の感情の常時接続です。かつては、休みになれば仕事から解放されていたのが、いまでは同僚の愚痴、顧客のクレーム、組織の不安といったネガティブなエネルギーが、いつでもどこでも手元のスマホから流れ込んできます。仕事とプライベートの境界が曖昧になったことで、心が完全に休める時間が奪われています。

SNSでの個人の発信情報だけでなく、社会全体が不安や怒り、痛みを途切れなく増幅して届けるシステムそのものが、現代人の共感力を限界まですり減らす大きな要因となっていると思っています。

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この情報過多の環境で生きる私たちの脳や神経系は、過負荷状態なのです。これ以上外部からの刺激を受け入れたり、自分の内面をさらけ出して摩擦を生んだりするエネルギーが残されていないため、「あえて省エネモードで生きる(=自分の思っていることを話さない)」という選択が、心身を守るための防衛反応として働いています。

この自分の思いを話さない人が増えている現象は、過剰で摩擦の多い現代社会では、自分の心を守り消耗させないために身につけた、極めて合理的な「心の鎧」だと言えます。

「自分の本音を言葉にしたとき、もし否定されたら自分の存在そのものが否定されたように感じる」という無意識の恐れがあるから、話せないのです。心の中に分厚い壁を作って、あえて何も語らないことで精神の安全を保とうとしています。でも、この状態が続くと、他者との間に心理的な距離が生じるだけでなく、自分自身でも自分の本当の感情が分からなくなるという現象が起きます。

ですから、これ以上鎧を着ることは止めましょう。その重さに自分自身がつぶれないように。

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消極的防衛から、積極的防衛へ

消極的な防衛が「壁を厚くして引きこもる」ことだとするなら、積極的な防衛は「自分の領土(境界線)を明確にし、他者と健全に関わりながら自分を守る」という能動的なアプローチでの自分の守り方です。

その方法をお話ししましょう。

●心理的な境界線の構築です。

他者の不機嫌や批判を「相手の問題」と「自分の問題」に明確に切り分けて、相手の感情の波を自分の内側に侵入させない技術です。

言いたいことをただ飲み込むのではなく、「ここまで踏み込まれるのは受け入れられない」というラインを内面、あるいは態度でしっかりと保持することが強力な防衛になります。

そのためには、自分の考え方や価値観、何が大事であるか、などをもつこと。それが、他者との境界線になります。もしそれが、思いつかないならあなたは自分を見失っているかもしれません。でも心配無用。怖がらずに、言語化していきましょう。

誰かと話していた時に、「なんか違う」と心に感じたが、言葉に出せないこともあったでしょう。その思いはどんな自分の考えから出て来た感情なのかを振り返り考えていけばよいのです。考える癖をつけていくことから始めましょう。

たとえば、今まで誰かと話していた時に、息苦しさを感じたことがありませんでしたか。それは、あなたが自分をまだ明確に理解できていないからです。他者に翻弄されるのではなく、「自分はどうしたいかを自分で選択すること」を理解できると良いですね。

あなたが「こだわること」ってありますね。「あなたにとって大事だと思うことは」、「あなたはどうありたいか」など。どんな自分だったら、前を向いて穏やかにリラックスしている自分になるでしょうか。

●攻撃や沈黙の二者択一を超えるアサーティブ・コミュニケーションの活用です。

つまり、相手を威圧せず、かつ自分を抑圧もしない態度で、「私はこう感じる」「私はこう考えている」と主語を自分にして伝える(I(アイ)メッセージ)方法です。

これは自分の意見を相手に押し通すためではなく、客観的に自分を表現する。ニュートラルな態度で、自分の考えや感じたことを伝えます。それによって、自分のアウトラインを相手に正しく認識してもらえます。したがって、誤解を防ぐ盾となって機能します。

●エネルギーを注ぐ対象を戦略的に選びます。

すべての批判や議論に真正面から応じる必要はないのです。自分にとって応じる価値がある/ないで、エネルギーの消費を意図的にコントロールします。防衛とはすべてを拒絶することではなく、どこで心身のエネルギーを使うかを自分の意思で決める主体性をもつことです。

●自分の内面を客観視する。

誰かに意見を否定されたとき、自分の感情に流されず、冷静に受け止めて、「自分の存在価値そのものの否定」ではなく、単に「相手の主観的な一意見」にすぎないと捉える枠組みを持ちます。

心が傷つきにくくなるのは、自分を頑丈な鎧で覆うからではなく、自分の価値が他者の評価に依存しなくなるという構造的な強さを手に入れたときです。

積極的な防衛とは、他者を遠ざけて孤立することではありません。「自分という存在のオーナーシップを自分の手元に握り直すこと」と言えますね。

そうすることで、より自分らしく、いまを生き抜くことができますよ。